歯周病と糖尿病はお互いに関係しており、歯周病は糖尿病の合併症の一つといわれています。糖尿病の患者さんは歯周病が悪化しやすく、歯周病になると糖尿病が悪化しやすくなります。歯周病と糖尿病についてご説明します。
歯周病と糖尿病は悪影響を与え合う
歯周病と糖尿病は関係の深い病気ですが、どちらかがもう一方の原因になっているのではなく、両方が悪影響を与えあって病気が進んでいきます。
糖尿病とは
糖尿病は糖分を分解するインスリンが十分に働かなくなる病気です。糖分をうまく細胞内に取り込めなくなるため、血液中に糖が増えて、血管壁が壊れて血管はボロボロになってしまいます。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖を一定の範囲におさめる働きをしています。
血流によって栄養と酸素が全身の細胞に運ばれますが、糖尿病によって血管が傷ついて血流障害が起きると、さまざまな臓器に問題が起こります。
若い方の中に糖尿病予備軍が増えている
若い方は、糖尿病は中高年の病気と思っておられるかもしれませんが、食生活の変化によって20代、30代の糖尿病予備軍が増えています。
歯周病の予防・治療のためには?
歯周病の初期症状では、歯周病菌の出す毒素で歯茎に炎症が起こります。歯茎に炎症が起こると、歯周病菌は歯茎の血管から簡単に体内に侵入してしまいます。
歯周病治療は毎日の歯みがきで歯垢をきれいに落とすことが大変重要ですが、歯ブラシで磨いただけでは、お口の中の汚れは6割程度しか取れません。デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで、8割程度の除去率となりますが、残りの2割は歯医者で定期健診を受けて専用の機具でクリーニングしないと落とすことが出来ません。
そのため、予防や治療のためには、年に2~4回程度は定期健診をお受けいただく必要があります。
糖尿病になると歯周病にかかりやすくなる?
口内では歯肉に血管が集まっています。糖尿病になると歯茎の血管も壊れてしまい、血流障害が起きます。細胞に酸素や栄養が十分に届かなくなるうえに免疫力も低下するため、歯周病にかかりやすく、かかった後も進行しやすくなります。
糖尿病は様々な合併症を起こす病気として知られていますが、歯周病もまた糖尿病が引き起こす合併症といわれます。
歯周病菌からは強い毒素が発生し、その毒素は血管の中を血流に乗って全身に運ばれます。すると免疫細胞からサイトカインという物質が分泌され、身体は自分を守ろうとします。サイトカインが全身に運ばれると、インスリンの働きが悪くなり、血糖値を下げられなくなります。
糖尿病の方で、食生活に気をつけていてもなかなか効果が出ない方は、歯周病が影響を与えている可能性があります。
糖尿病患者さんの歯周病を治療するとどうなる?
糖尿病患者さんの歯周病を治療すると、サイトカインの分泌量が減少し、血糖値のコントロールが再び可能になるという研究結果があります。
糖尿病の状態は検査前の1~2ヶ月間の血糖値を示すHbAlcという数値で評価されますが、歯周病の状態が改善するとHbAlcも改善するといわれています。
まとめ
糖尿病を進行させないためには、歯周病の予防と治療が大切です。また、食習慣の見直しを行うことは、歯周病と糖尿病の双方の改善に良い影響を与えます。