高齢の方のお口の健康管理は、健康で長生きするためには大変重要な課題です。高齢者のお口の健康管理についてご説明します。
目次
高齢者のお口の中の特徴とは?
高齢になるとお口の中にも様々な問題が起こってきます。
1.老化による歯と歯周組織の変化
老化によってお口の中の細胞も変化していきます。老齢の方に多い口腔内の状態は、歯と歯肉の境目が擦り減ったり、歯肉の退縮によって象牙質が露出して知覚過敏や虫歯が起こりやすくなります。
2.老化による舌や口腔粘膜の状態の変化
高齢の方は唾液の分泌量が減りますので、舌や粘膜が乾燥して口臭の原因になったり、味覚障害を引き起こすこともあります。歯肉炎などの炎症も起こりやすくなります。
3.お口の中に細菌が増える
細菌が棲みやすいのは、適度な温度と湿度がある環境で、口内はその条件を満たしています。そのため、歯や入れ歯に付着した細菌がそのままになると、更に細菌が増えて虫歯や歯周病を引き起こします。
4.入れ歯が合わなくなる
歯や歯茎の状態や形が変化すると、入れ歯は合わなくなってしまいます。合わない入れ歯を放置すると、噛む力が出ませんので、硬い食べ物を食べることが出来なくなり、栄養障害に繋がる恐れがあります。
高齢者のための歯周病と虫歯の予防
年齢を重ねるにつれてお口の中の問題は増える可能性がありますが、歯周病と虫歯は適切なケアによって予防可能な病気です。
歯周病と虫歯は口内の細菌が原因で発症します。口内の細菌を増やさないためには、適切なブラッシングとフロスの使用で歯の表面から歯垢をきれいに除去する必要があります。
特に歯と歯の間や歯と歯茎の境目の溝(歯周ポケット)には歯垢がたまりやすく落としにくいため、丁寧に洗いましょう。
また、虫歯菌は食べ物の中の糖分から酸を発生させて虫歯を作るため、糖分の摂り過ぎには注意しましょう。
口腔内の乾燥を予防しよう
老化によって唾液の量が減り、口内が乾燥しやすくなります。口内が乾燥すると細菌が繁殖しやすい環境になる為、十分に水分をとって乾燥を軽減させなければなりません。
唾液の分泌量を増やすためには、ガムを噛むこともおすすめです。ガムは出来るだけキシリトールの含有量の多いものを選ぶと、虫歯予防にも効果があります。
高齢者の口腔健康管理と全身疾患について
高齢者の虫歯や歯周病は、全身の健康状態にも関係があります。
特に虫歯や歯周病は、心臓病や脳卒中のリスクを高める可能性があるという研究結果がありますので、高齢者だけでなく若いうちから予防することが望まれます。
虫歯や歯周病は口内の細菌が原因で発症しますが、これらの細菌が歯茎の血管から血流に入り込んで全身を巡り、炎症反応を引き起こすことが、心臓病や脳卒中に繋がると考えられています。
また、歯を失って噛む力が弱くなると、食事の内容が柔らかいものに偏り、栄養状態の低下に繋がります。
高齢者の口腔メンテナンスの重要性
高齢者の方にとって、歯のメンテナンスは健康な生活を維持する上で重要なポイントです。毎日の歯磨きに加えて、定期的な歯科健診を受けることで天然歯を長持ちさせることが出来ます。
1.毎日の歯みがきなどのセルフケア
理想的なのは1日2回以上の歯磨きで、食事後と寝る前のセルフケアを行いましょう。特に眠っている間はお口の細菌が繁殖しやすいため、寝る前には必ず丁寧にセルフケアを行って、出来るだけお口の中の細菌を減らしましょう。
2.定期的な歯科健診
歯科の定期健診を年に2~4回受けるようにしましょう。歯周病や虫歯の初期症状はご本人にはわからない可能性がありますが、定期健診に通っていれば初期のうちに発見し、適切な処置を受けることが出来ます。また、定期健診時に専用の器機で歯のクリーニングを受け、歯垢や歯石を除去することも大切です。
3.歯に良い食事
食物繊維やカルシウムの豊富な食事を摂り、よく噛んで食べましょう。糖分を控えめにすると虫歯予防に繋がります。
4.唾液の分泌
口内が乾燥しないように、唾液を分泌させましょう。無糖やキシリトール入りのガムを噛んだり、顎のラインをやさしくマッサージして唾液腺を刺激して唾液を出しましょう。
高齢者のお口の健康管理に関するQ&A
高齢者のお口の中には老化による変化が見られます。歯肉の退縮による象牙質露出、歯と歯肉の境目の擦り減りなどがあり、知覚過敏や虫歯のリスクが増加します。また、舌や口腔粘膜の状態も変化し、口臭や味覚障害が起こりやすくなります。
歯周病と虫歯はブラッシングやフロスの適切な使用によって予防できます。歯垢を歯の表面から除去するために、歯磨きやフロスで歯と歯の間の歯垢もしっかりと除去しましょう。特に歯周ポケット部分は歯垢が溜まりやすいので注意が必要です。
高齢者の口腔内の乾燥を防ぐためには、十分な水分摂取が重要です。唾液の分泌を促進するために、キシリトール含有のガムを噛むことがおすすめです。口内が乾燥すると細菌が繁殖しやすくなるため、水分補給をしっかりと行いましょう。
まとめ
年齢を重ねるにつれてお口の中の問題は増える傾向がありますが、様々なケアや予防策によって問題が起こるのを避けることが出来ます。口腔内を健康な状態に保つためには、毎日のセルフケアと歯の定期健診が重要ですので、その重要性を認識して頂き、健康な生活を続けるためにお口のケアを怠らないようにしましょう。