唾液の分泌には様々な働きがあり、口内環境を守っています。唾液の質には2種類あり、ネバネバ唾液とサラサラ唾液があり、それぞれ働きが違いますので、ご説明します。
ネバネバ唾液とサラサラ唾液の違い
唾液にはネバネバ唾液とサラサラ唾液の2種類があり、ネバネバ唾液は粘膜などを保護・防御し、サラサラ唾液は食べ物を飲み込みやすくする働きをしています。
ネバネバ唾液(粘液)
- 分泌するタイミング:ストレス時に分泌されることが多い。(交感神経が優位な時に分泌される)
- 唾液の成分:水分が少ない。糖たんぱく質の一種であるムチンが多い。
- 役割:粘膜の保護・保湿。最近からの防御
サラサラ唾液(漿液)
- 分泌するタイミング:リラックス時に分泌されやすい(副交感神経が優位な時に分泌される)
- 唾液の成分:水分が多い。デンプンを消化するアミラーゼが多い。
- 役割:食べものを飲み込みやすくする。口の中のpHを中和する。
唾液の成分は?
唾液の主成分は水分です。それ以外に唾液に含まれている成分としては、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸などの無機成分や、糖たんぱく質、ホルモンなどの有機成分などがあります。
これらの成分によって、唾液にはかなり多岐にわたる働きや機能があります。その機能は、主に9つに分けられます。
1.食事に関する機能
- 食べ物を飲み込みやすくする・・唾液中のムチンや水分で食べものをまとめ、飲み込みやすい状態にする。
- 味覚を感じやすくする・・味のもととなる物質が唾液に溶けて味蕾へと運んで、味を感じるようにする
- 消化を助ける・・α-アミラーゼがデンプンを麦芽糖(マルトース)に分解し、胃で消化されやすくする
2.歯と粘膜に対する機能
- 潤滑・・唾液タンパク質が歯や粘膜を機械的損傷や感染から守る
- 洗浄して清潔にする・・歯や粘膜に付着した食べかすを洗い流して口の中をきれいにする。
3.歯に対する機能
- 再石灰化
- 脱灰への保護
- 緩衝
4.微生物に対する機能
- 抗菌・抗ウイルス・・口から入って来る細菌やウイルスの増殖を防ぎ、それらから守ってくれる
唾液が少ないと虫歯になりやすいの?
唾液がしっかりと出ていることで、歯は虫歯から守られています。唾液には様々な作用がありますが、虫歯から歯を守る働きについてみていきましょう。
1.緩衝作用
歯の表面を覆っている硬いエナメル質は、カルシウムやリンで出来ています。食後はお口の中が酸性に傾き、歯のエナメル質が溶けやすい状態になります。エナメル質が酸で一定量溶けてしまうと、虫歯になります。
唾液の緩衝作用は酸性に傾いたお口の中のpHを中和してくれる作用があり、虫歯を防いでくれます。
2.再石灰化作用
お口の中が酸性になって歯のエナメル質からカルシウムやリンが溶け出した状態を「脱灰」と呼びます。脱灰は初期の虫歯の段階ですが、唾液の「再石灰化」によって唾液中のカルシウムイオン、リン酸イオンが歯に再び取り込まれ、歯の溶けた部分が修復されます。
この再石灰化作用によって、ごく初期の虫歯であれば、削らなくても自然に修復されて治ることがあります。
3.自浄作用
歯と歯の隙間や、歯と歯茎の間に食べかすが残ってしまうと、そこに虫歯菌などの細菌が集まって歯垢(プラーク)を形成します。歯垢の中では細菌がどんどん増殖していきますが、唾液には食べかすや歯垢を洗い流す働きがあり、細菌によって虫歯や歯周病になるのを防ぎます。
4.抗菌作用
唾液中には、リゾチームやペルオキシターゼという物質が含まれています。これらの物質は、虫歯菌に対して抗菌作用をもっていますので、虫歯を防ぐ役割をします。
ネバネバとサラサラの2種類の唾液に関するQ&A
ネバネバ唾液は粘液であり、粘膜の保護・保湿や最近からの防御などの役割があります。一方、サラサラ唾液は漿液であり、食べ物を飲み込みやすくする役割や口の中のpHを中和する役割があります。
ネバネバ唾液はストレス時や交感神経が優位な時に分泌されることが多く、サラサラ唾液はリラックス時や副交感神経が優位な時に分泌されやすいです。
唾液がしっかりと分泌されていることで、唾液の緩衝作用によって酸性の口内環境を中和し、虫歯を防ぐことができます。また、唾液の再石灰化作用によって初期の虫歯が自然治癒されることもあります。したがって、唾液が少ない状態ではこれらの防御機能が低下し、虫歯になりやすくなるのです。
まとめ
唾液にはネバネバとサラサラの2種類があり、それぞれ働きや役割が違います。唾液をしっかり出すと消化吸収を助け、お口の中を清潔にしてくれ、虫歯予防にも繋がります。また、唾液は細菌やウイルス、真菌などへの防御作用をもつ成分も含んでおり、感染症予防に対しても重要な働きをしています。